老人ホームのイメージが変わる?高齢者の尊厳を守る「ユニットケア」

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病院のような部屋で一日中ベッドに寝かされ、流れ作業の介護処置……。そんなイメージから、「老人ホーム」という言葉に、ネガティブな印象を持つ人はいるのではないでしょうか。

しかし現在、特別養護老人ホームをはじめとする施設で「ユニットケア」の推進が図られています。従来の多床型(相部屋タイプの居室)の施設とは一線を画すこの「ユニットケア」とは一体どのようなものなのでしょうか?

プライバシーが保障されていなかった、90年代以前の介護施設

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まずはユニットケアが導入される以前のケアについて簡単にご説明しましょう。

介護保険制度が導入される2000年以前、まだ“介護サービス”という概念がなかった時代、介護施設では4~6人ほどの大部屋が当たり前でした。限られたスペースにベッドが並べられ、場合によっては男女混合の部屋もあるほど。着替えや排せつ処理などもカーテン1枚で仕切られたベッドの上でおこなわれるという、個人の尊厳への配慮があまりされていないケアがおこなわれていたのが実情です。

多床型は、介護を提供する側から見れば、効率よく業務をおこなえるというメリットはあります。しかし当時、介護は「措置」としておこない、利用者の視点に立った質の高い介護の提供や、それを実現するためのスタッフ教育を徹底していた施設は、今ほど多くはなかったのです。

個人のライフスタイルに応じた、自分らしい老後の実現に向けて

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病気による入院など一時的なことならばまだしも、“終の住処”ともなりえる場所で大人数が同じ部屋で暮らすことがどれほどストレスになるか、想像に難くありません。

そういった「個人の尊厳」を守るために近年広がりを見せているのが、「ユニットケア」です。ユニットケアとは、一人ひとりの生活リズムやライフスタイルに合わせたサービスを提供していくケアの手法を指します。

ユニットケアでは居室が完全に個室のため、一人でリラックスできる時間を確保できるうえ、脱着衣、おむつの交換なども他の入所者の視線を気にせずおこなうことができます。また、入居者が感染症などにかかってしまった場合でも、他の入所者への伝染も最小限にとどめることができるのです。

また、1つのユニットは10人以下の少人数で構成されているため、介護や生活援助をするスタッフも、入所者の動向や体調の変化に敏感に気づきやすくなります

このユニットケアの考え方は、福祉先進国である欧州諸国が始めたものですが、日本でも2002年度より政府がユニットケアをおこなう特別養護老人ホームに対して補助金を支給するなどして、その拡大が進められてきました。

ユニットケアの浸透に向けた、これからの課題点

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ユニットケアは国を挙げて推進されていますが、実現に向けた課題点も多くあります。

まず、従来の特別養護老人ホームがユニットケアに移行する場合、間取りや設備を改修する必要があります。場合によってはリフォームでは不可能で、建て替えが求められるケースも。そのため、なかなか普及には至っていないのが現状です。

また、複数人で住居費用や光熱費を割っていた多床室と比べ、それらの費用が個室になることで割高になるため、月々の出費も拡大します。収入や年金の受給額によって一部減免措置はあるものの、これら諸費用は介護保険の適用範囲外のため、家族にとっては大きな負担になりかねません

さらに、担当する介護職員に対しても、顔なじみのスタッフによる、少人数ならではの手厚いケアが望める傾向にありますが、職員が限定されることによって、逆にローテーション勤務がうまく回らなくなるケースや、経験の浅い職員がユニットリーダーに就いた場合に介護の質の低下を招く恐れもあります。

ユニットケア実施は特養の3割程度。今後さらなる普及が求められる

全国の特別養護老人ホームのうち、ユニットケアを導入している施設は、全体の3割程度と言われています。施設改修にかかる費用が大きなネックとなっているようです。

しかし、自宅と遜色ない暮らしの実現のために、国が主導してのインフラ整備補助や人材教育は着実に進んでいます。人が人としての尊厳を保つためのユニットケアがさらなる拡大されていくことを期待したいですね。

参考文献
ユニットケアについて(一般社団法人ユニットケア推進センター)
ユニットケアについて(厚生労働省)
ユニットケアに係る研修のあり方に関する研究(三菱総研)