平成27年度介護保険制度改正。従来と比べてどう変わったか徹底解説

高齢者が介護サービスを受けるときには、個人負担分を除いた費用の半分は、「介護保険」の財源から支出されます。この介護保険に関する制度は3年に1度見直しが行われ、介護報酬の見直しや法令の改訂などが取り決められることとなっています。

介護保険制度の改正は、事業者や現場で働く介護スタッフへの影響ばかりでなく、介護サービスを利用する私たちにも、規制緩和やサービス利用の制限などさまざまな変化をもたらします。

今回は、2015年4月の介護保険制度改正のポイントを押さえるとともに、改正にともなう介護サービス利用者への影響について考えてみたいと思います。

日本における介護保険の歴史

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まずは、日本における介護保険の歴史について振り返ってみましょう。介護保険制度は1997年に成立、2000年に初めて施行されました。その背景には、増え続ける高齢者に対する介護サービスのニーズ、そして家族介護の限界がありました。

もともと成立から施行までの期間が3年と短く、十分に議論や研究がされないままスタートしたこともあり、改正のたびに制度の見直しがおこなわれています。過去を振り返ると、2006年度の改正では「介護予防」、2012年度の改正では「地域包括ケア」がテーマになりました。

65歳以上の高齢者が介護サービスを受ける場合、利用料は、利用者の自己負担額を除いたうちの半分を介護保険、もう半分を自治体(国、都道府県、市町村)でまかなう仕組みとなっています。

40歳以上の全国民が保険者となり、65歳以上の人が支払う第一号保険料と、40~65歳までの人が支払う第二号保険料に分けられています。

平成27年度介護保険制度改正のおさらい

では今回の改正ポイントについて触れてみましょう。ここでは、介護サービスを利用する方に関連性の高い変更点を中心にまとめました。

高所得者の自己負担額が1割から2割へ

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介護サービスの費用負担の公平化を図るため、「一定以上の所得がある人」の自己負担額が1割から2割に引き上げられることになりました。この“一定以上の所得”は、年金などによる収入が一人暮らしで280万円/年、または夫婦で359万円/以上が対象となっています。

現在、医療費の自己負担額が、(75歳未満の場合)1割から2~3割に引き上げられたこともあり、ある程度収入のある高齢者であっても、介護サービスおよび医療機関の定期的な利用が大きな負担となってくるかもしれません。

低所得者が納める介護保険料を軽減

65歳以上の低所得者が納める介護保険料が軽減されることになりました。

これまで、65歳以上が支払う第一号保険料の金額は、保険者の所得に応じて6段階に分類されていました。

しかし今回の改正ではこれを9段階に分け、最も下の第1段階にあたる低所得者・生活保護受給者の負担額を基準額の5割から3割に引き下げました。また、それと同時に最も上の第9段階にあたる高所得者の自己負担額が(基準額の)1.5倍から1.7倍に引き上げました。

これにより、低所得者の負担額が今までよりも下がる一方で高所得者の負担額が増え、格差が是正されることが期待されています。

「要支援」が介護保険適用から外れ、自治体の地域支援事業に

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要支援1・2の方が利用している通所介護(デイサービス)と訪問介護の利用に介護保険が適用できなくなり、今後は自治体主導の「地域支援事業」にシフトしていくことが決まりました。

地域支援事業では、要支援1・2の人と自立の人が同じ枠組みで「介護予防事業」を受けることになります。介護予防事業は、コミュニティサロンや簡単なエクササイズ教室、栄養指導セミナーやパンフレットの配布による啓発などを指し、住民全体で参加がしやすく、元気な時からの切れ目のない介護予防を継続することを目的としています。

もちろん、要支援1・2の方が従来のデイサービスなどを引き続き利用することは可能です。しかし、介護保険から支払われていた各事業所への報酬が自治体の財源(税金)から出されるため、地域ごとに利用料金やサービスの質に格差が生じ、採算の取れなくなった事業者が次々と倒産に追い込まれることも考えられます。今後さらに議論を重ねていく必要があると言えるでしょう。

特別養護老人ホームの入所条件を「要介護3以上」に限定

現在、特別養護老人ホーム(以下特養)に入所している人の約8割以上が「要介護3」以上に該当しますが、家庭の事情などで要介護1・2でも入所が認められるケースもあります。そのため厚生労働省では、今後入所できる条件を要介護3以上とすると同時に、要介護1・2の方に対して高齢者向け住宅への入居をすすめています

特養への入所希望者は後を絶たず、入所待機者の多さがたびたびニュースでも取り上げられています。今回の改正で、少しでもベッドの空きを確保し入所待機者を減らす狙いがあります。

特養の入居条件などについてはこちら
特別養護老人ホームに入るには?「入居条件」と「入居待ちの間の過ごし方」

賛否両論の改正。2018年の改正に期待

本来ならば、より充実した介護を受けられるようにするための法改正であるべきですが、2015年度の改正には利用者に対していくつか不便を感じさせる変更点があったことも否めません。

「要支援」の方が介護保険適用から外れて自治体の地域支援事業に切り替わったことで、デイサービスでも従来どおりのサービスが受けられなくなる可能性があるばかりか、本人が望んでいないサービスを押し付けられることも考えられます。

また今回の改正では、事業者に支払われる介護報酬もマイナス改定(-2.27%)となり、事業者の収益に大きな影響を及ぼしました。倒産に追い込まれた事業者も多く、現場で働くスタッフのモチベーションにも強く影響したことでしょう。ヘルパーが安心して希望を持って働ける職場でなければ、肝心の“介護の質”を担保することはできません。

今後も3年に一度のタイミングで見直しされる介護保険制度ですが、限りある介護保険の財源とうまく折り合いをつけながら、だれもが不自由なく笑って老後を迎えられるような法案が出てくることを期待したいところです。

参考文献:
『もっと変わる!介護保険』小竹雅子著、岩波書店
東京商工リサーチ(介護事業者の倒産件数)