【専門医監修】【暴力、アパシー、妄想】認知症の周辺症状(BPSD)9種類まとめ

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「なぜうちの親ばかり徘徊するのだろう」「〇〇さんのところでは妄想が出ているようだけれど、うちでもそのうち出るのだろうか?」。

認知症の家族をお持ちの方は、デイサービスや老人ホームなどで目にする、ほかの家庭の認知症の方と比較してこのような思いを抱いたことはありませんか?

同じ認知症という病気にもかかわらず、症状に差が出ていると不安に感じることでしょう。しかし、それは徘徊や妄想といった症状が、個人差が出る周辺症状(BPSD)と言われるものであるためです。

今回は認知症の周辺症状について説明していきます。

個人差があり、家族へのストレスも大きい、周辺症状(BPSD)

BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:周辺症状)は認知症の方に見られる、中核症状にともなって起こる行動症状・心理症状のことを言います。中核症状は記憶障害など、ほぼすべての認知症の方に見られる症状のことです。一方で、それにともなう周辺症状(BPSD)は個人差がありすべての患者に見られるわけではありません。しかし、徘徊や不潔行為、うつなど、発症した場合家族にとって大きなストレスになることも多く、早急な治療や適切な対処が必要となります。

周辺症状(BPSD)とその対策

徘徊

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不安や焦燥、見当識障害により歩き回る症状です。「夕暮れ症候群」と言われ、夕方から夜間にかけて多くなる傾向があります。行方不明や交通事故などの被害も多く、周辺症状の中でも特に注意が必要です。

対策としては、エリア外に出るとアラームで知らせてくれる「徘徊センサー」を本人に持たせたり、「認知症サポーター」を中心とした、地域でのネットワークの充実などが考えられます。

しかし特にアルツハイマー型認知症に多く見られるような「家に帰る」、「会社で仕事をする」という徘徊は、本質的には家庭内での役割喪失を憂う感情からかつて自分が輝いていた時代に戻りたいという情動の表れです。

患者さんが家庭内で役目を持っている、自分は必要とされているんだと自覚できるよう、患者さんが失敗しない程度の家庭内での役割を担って頂くのが、徘徊を予防する最も有効な手立てでしょう。

多動

前頭側頭型認知症(40~64歳発症の初老期認知症には比較的多い。以前ピック病と呼ばれていた認知症ともほぼ重なります)のBPSDの特徴として見られるのが多動で、落ち着きなく同じコースを歩き回る「周徊(しゅうかい)」や時刻表のように同じ行動を決まった時間に繰り返す「時刻表的生活」などが見られます。

このように同じ行動を常に繰り返すことを「常同行動」と言います。対処法としては、介護を常同行動のルーティンの中に取り込む(9時、12時、19時に食事をとり、15時になったらオムツを替える、など)ことが考えられます。

不潔行為

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排泄物を手でもてあそぶ弄便や、尿を撒き散らしたりという不潔行為は、見当識障害や実行機能障害によって起こります。残便による不快感を解消するために便を手で出そうとしたり、排尿障害や歩行障害によってトイレまで間に合わず漏らしてしまうこともあります。

決まった時間にトイレに行くようにしたり、オムツをこまめにチェックしたりして、認知症の方が便をいじらないようにしましょう。また、爪を切りそろえ、手洗いを徹底し、清潔な状態を保つようにすることも必要です。

不安/焦燥

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認知症の方は一般に病識(自分が病気であるという認識)には欠けますが、漠然と分からないこと、できないことが増えていき自分が壊れていくようだという病感は保たれているため言いようのないストレスを感じ、不安・焦燥状態になりやすいです。一人になるのを極端に恐れたり、焦燥から不平や不満を大声で叫んだりするのが特徴です。

ストレスを感じ、不安・焦燥状態になりやすいです。一人になるのを極端に恐れたり、焦燥から不平や不満を大声で叫んだりするのが特徴です。

命令口調や威圧的な態度で接したり、不用意な身体接触をすると、その不安や焦燥をさらに増加させてしまう可能性があるので、「共感」を軸にしたコミュニケーションを心がけましょう。

アパシー

アパシーとは自発性や意欲が著しく低下し、家に閉じこもりがちになることを指し、無気力で何をする気にもならない状態が続きます。うつ病と混同されがちですが、アパシーは特に意欲の低下が顕著に現れます。

アパシーの対処法としては認知症治療薬の投薬が効果を認められています。ただし、認知症治療薬は副作用を起こすおそれもあるので、処方を希望する場合は医師とよく相談してから決めましょう。

うつ

脳萎縮や血管障害によって気分の抑うつや慢性頭痛、不眠などうつ症状が出現するケースもよく見られ、アルツハイマー型認知症の初期には約20〜40%の方に見られると言われています。認知症初期は病識があるため、記憶力の低下などに喪失感を抱き、悲観的になってしまうのです。

家族がうつ状態にあると気づいたら、運動や会話などを通して少しでもリフレッシュできるよう気を配るようにしましょう。

無為・無反応

レビー小体型認知症では意識障害によって覚醒レベルが低下し、反応が鈍くなることが起こります。前述した、アパシーやうつによっても無為・無反応が起こる可能性もあり、何事にも関心を持たなくなってしまいます。

スキンシップや音楽療法などによって五感を刺激することが効果的だと言われていますが、あくまで患者さんの快い、楽しいという感覚を呼び起こすことが重要で、やみくもにおこなっても効果はありません。音楽療法や絵画療法などは一見誰にもできそうで、実はしっかりとした専門的技術を要する方法なのです。

幻覚/妄想

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幻覚は、ないものが見える幻視と、ない声・音が聞こえる幻聴があります。特にレビー小体型認知症の方の8割は幻覚がみられます。また、アルツハイマー型認知症では妄想も多く、「物盗られ妄想」などで、家族や介護職員の心が深く傷つくケースも。

幻覚や妄想への対処法としては、相手の言うことを否定しないコミュニケーションが重要になります。

暴言・暴力

認知症によって前頭葉の機能が低下し、感情のコントロールが難しくなった場合、家族や介護職員に暴言や暴力が振るわれることがあります。実際、介護職員の9割以上が暴言・暴力の被害に遭っていると言われています。

レビー小体型認知症による睡眠障害(レム睡眠行動異常)、脳血管性認知症によるせん妄が原因である場合、夜間であっても大声を挙げたり家族、介護職員と物理的に衝突するケースがあり、家族の疲弊につながります。

対処法としては、認知症の方とのコミュニケーションの取り方を考えましょう。警戒心を抱かせないよう、感情的な言い方を控えてあくまで理性的な話し方をしたり、どうしても耐えるのが難しければ距離を取りましょう。また薬剤による治療が有効な場合もあります。医師に相談してみましょう。

負担が重い周辺症状だが、症状が見られなくなることも

認知症の周辺症状(BPSD)のなかでも徘徊や暴言・暴力などは家族の負担も重く、介護をする側は大きなストレスを受けます。しかし、認知症の進行に伴って変化することもあり、家族の適切な対応がそのカギとなります。正しい理解に基づく、正しい対応を心がけましょう。

監修医

伊達悠岳
医師。専門は神経内科。済生会横浜市東部病院勤務。