重大な病気につながるリスクも!?口腔ケアで口内環境を清潔・健康に!

高齢の家族と一緒に生活しているとある日突然、歯みがきを拒否するようになる、食事を食べたがらなくなるといった様子が見られることがあります。これには病気や体調不良などさまざまな原因が考えられますが、実は、口の中(口腔)に何かしら異変が起きている可能性もあるのです。特に口臭が気になるようだったら、その疑いはさらに強くなります。

今回は、高齢者の口腔ケアのポイントについて、歯みがき・清拭・うがいの3つの方法をご紹介しながらご説明します。

口腔ケアの必要性

まずは、なぜ口腔ケアが必要となるのかについてご説明しましょう。

ふだん私たちは習慣として、毎朝、毎晩、食事の後に歯みがきをしますが、これを怠って長時間放置すると、歯に詰まった食べものの残りかすなどが原因で口内に細菌が大量に繁殖し、虫歯や歯周病を引き起こします。さらに、免疫力の弱い高齢者の場合、だ液に混じった口腔内の細菌が肺に入り込むことで「誤嚥性肺炎」を引き起こすリスクが高まります。肺炎や気管支炎で死亡する人の約9割は65歳以上の高齢者であることからも、口腔ケアは健康維持のための重要ポイントの一つであることがわかります。

また、起床後の口腔の乾燥にも気を配りたいところです。冬場のように空気が乾燥する季節は、インフルエンザをはじめさまざまなウイルスが空気感染しやすい環境にあります。通常、口の中は粘膜によって保護され、ウイルスの侵入を防ぐ役割を担っていますが、口の中が乾燥した状態では免疫力も弱まるため、感染症にかかりやすくなります。

口腔ケアの手法は「歯みがき」「清拭」「うがい」の3つ

口腔ケアの手法は、歯みがき清拭うがいの3つに大別できます。理想的には、歯みがきによるケアが望ましいところですが、まひなどによって口が開きにくい高齢者、入れ歯を使用していて歯がない(少ない)高齢者もいるため、個人に合ったやり方を実践する必要があります。

3つの手法に共通して、必ず上半身を起こした状態で介助してください。もし起き上がることが難しく、ベッドにリクライニング機能がついていない場合は、側臥位(横向きに寝た状態)でおこなうようにしてください。

「歯みがき」による口腔ケアのポイント

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用意するもの:歯ブラシ、歯みがき剤、水の入ったコップ、受け皿

はじめにコップの水で口の中を湿らせ、歯ブラシと歯みがき剤を用いて歯と歯茎をていねいにブラッシングします。歯間に食べものの残りかすがある場合はしっかりと取り除きます。

歯茎は強くブラッシングするのではなく、マッサージする感覚でやさしく円を描くようにこすることで血行促進の効果が得られます。歯と歯茎の境目は、細かな食べものが付着しやすいため、よく目視しながらみがくようにしてください。

歯みがきが終わったらコップの水で口をゆすぎ、受け皿へ吐き出してもらいます。同時に、感染症予防のためにうがいもしてもらいましょう。最後に口の周りをタオルで拭き、唇に乾燥が見られる場合は、保湿のためのリップクリームを塗るようにしてください。

「清拭」による口腔ケアのポイント

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用意するもの:スポンジブラシ、ガーゼ、水の入ったコップ、受け皿

総入れ歯を使用していて歯がない、歯の本数が少ない高齢者や、重度の嚥下障害のある高齢者に適したケアの手法です。

上の歯と歯茎、下の歯と歯茎をみがき、次に頬の内側、口蓋(上あご)、舌の周囲と、口腔全体を優しくみがきます。みがく順序は介助者のやりやすいように変えても問題ありません。舌の周囲は嘔吐反射につながりやすいので、深くブラシを突っ込まないように注意しましょう。

ここで使用するスポンジブラシは歯ブラシと似た形状ですが、先端部分がスポンジ状になっている用具です。ただし歯ブラシとは異なり、衛生面の問題から基本的に使い捨てになります。薬局などで入手できますが、インターネット販売で安く大量に購入するのも経済的です。

ちょっとしたみがき忘れや詰まりものを除去する際は、濡らしたガーゼを介助者の指に巻きつけておこなうことも可能です。しかし衛生面から、介助者は必ず使い捨ての手袋を装着するようにしてください。

うがいによる口腔ケアのポイント

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用意するもの:うがい薬、水の入ったコップ、受け皿

起床時や食事の前などに簡単にできる口腔ケアの方法です。口の中が乾燥しているときに有効で、うがい薬を使えばさらに殺菌効果が高まります。

介助者はコップを被介護者の口に近づけ、うがいと口の中をゆすいでもらうよう促します。このとき、万が一水を吐き出しても大丈夫なように、もう片方の手で被介護者のあごの下に受け皿を持っていきます。首の周囲にタオルを巻いておくのも有効です。

口の中がきれいになるまで、うがいとゆすぎを数回繰り返してもらいます。

入れ歯を使用している場合の注意点

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多くの高齢者が入れ歯を使用していますが、入れ歯の取り扱いも口腔ケアに深く関係します。

基本的に入れ歯は日中装着し、就寝前に取り外すケースがほとんどです。しかし装着時に入れ歯と歯茎の間に食べものの残りかすなどが挟まっていると、そこの部位が炎症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

また、長時間口の中に置かれた入れ歯にはかなりの量の細菌が付着しています。一度でも外したら、必ず洗浄剤を入れた容器に漬けて清潔に保つようにしてください。洗浄液に頼るばかりでなく、定期的に歯ブラシを使い入れ歯をみがくようにしてください。歯間や部分入れ歯の金属部分などもしっかりとみがき、清潔に保つよう心がけましょう。

重大な病気の予防のためにも今日から口腔ケアを

日常の介護の中で、口腔ケアはつい見落とされがちですが、重大な病気や事故につながるリスクが大きいことからも、一緒に暮らす家族には常に注意し管理することが求められます。口臭がきつくなって初めて口内環境の悪化に気づいたとしても、その時点ですでに重大な病気に侵されている可能性も捨てきれません。

口腔内が常に清潔に保てていれば、それだけで爽快感が得られるものです。同時に気持ちも上向きになり、あらゆる病気の予防策にもなるため、介護をされている方は、今回ご紹介した口腔ケアをぜひ実践してみてください。

参考文献
『介護技術の基礎と実践』日本医療企画
一般社団法人日本訪問歯科協会