在宅介護者必見!辛い腰痛を防ぐ「ボディメカニクス」のすすめ

介護と切っても切り離せない悩み、それが腰痛……。体の自由がきかない高齢者の起き上がりや歩行などをサポートする中で、介護者自身も無理な体勢を続けてしまい、腰に大きなダメージを受けることは珍しくありません。

実際、弘潤会野崎東病院および老人保健施設がおこなった調査では、施設の看護介護職員の約75%が何らかの腰痛に悩んでいるということが明らかになっています。

家族の介護をする中で自身の身体を痛めてしまっては元も子もありません。今回は、介護に関わる腰痛を予防し、軽減する「ボディメカニクス」という技術について解説します。このボディメカニクス、言葉だけを難しそうに思われるかもしれませんが、意識ひとつで簡単に普段の介護に取り入れられるものなので、ぜひ参考にしてください。

なぜ介護で腰痛になってしまうの?

女性

介護における腰痛は、負担が大きい姿勢で人やものを持ち上げることが多いために、起こります。

介護ベッドが低いために、前かがみや腰をねじった姿勢で作業をしたり。あるいは、低い場所に置いてあるものを自分の重心が高いままで持ち上げたり。このような場合に、腰へ大きな負担がかかります。

また、普段椅子に座っているときの姿勢も、腰痛の原因のひとつです。

このような、腰痛のもととなる行為を防ぎ、腰痛を予防するのに最適なのが、「ボディメカニクス」になります。

「ボディメカニクス」を応用すれば、小さな力で大きなものを動かせる

ボディメカニクスとは、骨や筋肉、関節の仕組みを元にして、もっとも効率的な力を出すために導き出された理論のことです。おもに介護や看護の現場で活用されています。

ボディメカニクスについて知り応用することで、小さな力で大きなものを動かすことができます。力を出そうと無理な姿勢をとる必要は無くなり、介護者の腰や肩への負担も軽減されるというわけです。

以下では、ボディメカニクスの7大原則と言われるものをご紹介します。介助するときだけではなく、普段の生活にも取り入れるよう、意識しましょう。

日常生活から意識したい!ボディメカニクスの7大原則

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1.支持基底面の面積を広くする

支持基底面とは、体が床に接している部分を直線で結んだ面積のことです。この面積が広いほど、重心が安定します。

人は直立不動の姿勢では何時間も立ち続けることはできず、ふらふらしてしまいます。これは支持基底面が狭いためです。実は、転ばないために杖を使うのも地面に接する点を増やして重心を安定させる目的があります。介助の際は、足を開いて重心を安定させましょう。

2.重心の位置を低くする

姿勢を低くすれば重心が安定して、力を出しやすくなる。これは、多くの方が体感として理解できることでしょう。例えば、綱引きを思い浮かべてください。力を入れる際には膝を曲げ、腰を低くするはずです。

3.重心の移動をスムーズにする

腰を痛めやすいのは、例えば、立ち上がりの介助の際に介護者が腰をねじってしまうときです。これは、高齢者の重心が後ろに残っているにもかかわらず無理に重心を前に移そうとしていることが原因です。

立ち上がりの際には、スムーズに重心の移動ができるよう高齢者にも協力してもらいましょう。高齢者が上半身を前傾させて、腰を少し浮かせたのと同時に引き上げると、すんなり後ろから前へ重心を移せます。

4.重心を近づける

高齢者の体を起こすときに、自分の重心をできる限り相手に近づけることも大切です。介護をするときの重心線(耳たぶから膝、くるぶしを通る線)が支持基底面を通る姿勢を維持しながら、重心を高齢者に近づけましょう。

5.てこの原理を使う

少ない力で大きなものを動かす、「てこの原理」をボディメカニクスでは応用します。例えば、寝ている高齢者を仰向きの状態(仰臥位)から横向きの状態(側臥位)に移すとき、自分の体を支点代わりにすることで、より小さな力で動かすことができます。

6.身体を小さくまとめる

高齢者の身体を小さくまとめることで、介護者の手の平にかかる負担を軽減することができます。寝ている高齢者の向きを変えたりする際は、両腕を胸の前で組んでもらったり、両膝を立ててもらったりして、身体の長さを縮めてもらいましょう。

7.大きな筋群を使う

大筋群とは、大胸筋、広背筋、大腿四頭筋、腹直筋、大臀筋、脊柱起立筋という、大きな力を出せて疲れにくい性質を持つ筋肉のことです。これらの大きな筋肉は胴体に集中しています。そのため、腕や足の力だけに頼るのではなく、重心を近づけて大筋群の力を利用しましょう。

終わりに

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介護の腰痛を防ぐには、以上のボディメカニクスが効果的です。しかし、介護は人と人の間で成立する行為なので、自分だけが意識しても効果は薄いものです。

介護を受ける高齢者としっかり信頼関係を築いていなければ、身体を小さくまとめてもらったり重心を移動したりといったことは、なかなかうまくいきません。

自身の腰痛を予防するためにも、まずはしっかりと高齢者とコミュニケーションをとることを心がけましょう。

参考文献:介護職員関係養成研修テキスト作成委員会編『介護職員初任者研修テキスト』