介護職員の98%以上が被害者!?認知症高齢者の“暴力”とどう向き合うべきか

認知症高齢者と暮らす家族が頭を悩ませる大きな問題の一つが暴力です。高齢者とはいえ男性ならばそれなりに腕力はあるもの。身体的に受けるダメージはもちろん、信頼していた家族から受けた暴力は、家族の心に大きな影を落とすことになります。

認知症の高齢者はなぜ暴力を振るうようになるのか。その原因を探るとともに、適切な対処方法を考えていきます。

暴力に走る認知症高齢者。その原因は?

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認知症の高齢者が暴力を振るう原因のひとつに、感情のコントロールが難しくなっていることが挙げられます。脳の中でも感情を司る前頭葉が加齢とともに委縮し始め、本来ならば怒りを抑えようと働いていたはずの理性も、認知症の進行により働かなくなってしまっているのです。また、酒やタバコも前頭葉に悪影響を与えることが認められています。長年の生活習慣が怒りや暴力となって高齢者に現れている一面も否めません。

また、薬が悪影響を及ぼす可能性もあります。認知症に限らず、日ごろから抗うつ薬や睡眠薬を服用している高齢者は多くいることでしょう。しかし、薬に頼りきりの生活が一度身に付いてしまうと、今度はその薬なしでは不安で仕方ないと感じるようになり、情緒不安定を招くのです。

例えば、認知症の治療薬として有名な「ドネペジル塩酸塩」という薬があります。この薬の主な副作用として、食欲不振、嘔吐、下痢などが報告されています。試しに投薬を止めてみたところ、食欲が以前のように戻り、精神的な安定を取り戻してくれたという例もあります。

医師の許可なく薬を急に止めたり、量を減らしたりするのは危険ですが、私たちの中にも、どこか「薬が解決してくれる」という意識があり、薬に頼る習慣が精神的な不安定、そして暴力行為を助長しているのかもしれません。

介護職員の98%が被害に!セクハラや暴言も“暴力”のうち

ときに暴力は腕力によるものだけでなく、ことば(暴言)やセクハラ行為にも見られるようになります。今年、介護の人材紹介業者が全国の介護職員を対象におこなったアンケートによると、全体の98%が暴力や暴言を受けたことがあると回答しました。

「声をかけた瞬間殴られた」「突然手を噛まれた」「胸やお尻を触られた」といった内容です。中には容姿を罵られた女性もいたようです。「介護施設と家とでは状況が違う」と思われる方もいるかもしれませんが、家庭内の暴力に対処できず高齢者を施設に預けた世帯もあります。

また、自宅で父親の介護をしていた娘が、ある日突然父親から求愛されたことがショックで一時的に介護するのを拒否するといったできごとも起こっています。父親が女として自分を見ていたことを受け入れられなかったようです。しかし後に色々な人に相談していくうちに、娘の容姿が若いころの母親にそっくりだったことから、父親は妻(母親)の若いころと勘違いをして惚れてしまったのではないかと思えるようになり、再び介護に戻る決心がついたといいます。

暴力や暴言、セクハラに走るには必ず何かしら理由があるはずです。何かがきっかけで家族の過去を知ることができるのならば、その人の歩んできた人生を知る努力をしてみてはいかがでしょう。もしかしたら暴力問題解決の糸口が見えてくるのかもしれません。

暴力行為にいたる前に、常に先手のコミュニケーションを心がける

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それでは暴力を振るう認知症高齢者とどのように向き合っていけばよいのでしょうか?暴力を止めさせる一番のカギはコミュニケーションにあります。

例えば、脱着衣の介助の際、何も声をかけずにいきなり洋服を脱がそうとするのは絶対にNGです。向こうからすれば、何者かが物を盗もうとしている、自分に危害を加えようとしていると感じて、とっさに防衛行為に出るのです。

また、その人の生活習慣を乱すような行為に対して怒りを覚えるようなこともあります。例えば、毎日漬物を食べる人がいて、ある日の食卓にその漬物が並んでなかったとします。認知症の高齢者はそういった変化に敏感でありながら、問題を理解し対処できるだけの余裕がないため、急に怒り出し、場合によっては食器をひっくり返したり投げつけたりしてしまうのです。

洋服を脱がす前に「今から出かけるので着替えましょうね」や、配膳の時点で「今日は漬物が売り切れだったの。明日スーパーに行って買ってくるからね」といった具合に、先手を打ってコミュニケーションを取るようにしましょう。誠心誠意を尽くして応対すれば、きっと家族の気持ちを心の奥底で理解してくれるはずです。

認知症の方とのコミュニケーション方法についてはこちらの記事もどうぞ
「否定しない」が大原則。認知症の方との上手なコミュニケーション方法

また、コミュニケーションは家族間の問題だけでなく、外部の人に対しても重要なものになってきます。在宅介護の場合、訪問介護ヘルパーを自宅に呼ぶこともありますが、初対面や外部の人間を自宅に招き入れる際には十分注意が必要です。

もちろん、プロのヘルパーは様々な認知症の高齢者と接しているため、あらゆる対策を心得ています。しかし暴力を振るった経験があることや、過去にこんな状況で突然怒り出したなど、初めて接するヘルパーに情報を伝えておかなければ、些細なことがきっかけでヘルパーに暴力を振るい、ケガをさせてしまうことがあるのです。

家族が疲弊してしまう前に、まずは誰かに相談すること

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暴力行為は未然に防ぐことが一番ですが、もし相手が暴力を振るってきた場合でも、絶対に暴力で返してはなりません。高齢者は筋力ばかりでなく骨も弱くなっているので、取っ組み合ったり押し倒したときに、簡単に骨折してしまう可能性が高いのです。

また、身体的なダメージ以外でも、「息子(娘・孫)から仕返しを食らった」という記憶は残ってしまうものです。悲しい記憶を引きずったまま部屋に閉じこもるようになれば、ますます認知症が悪化してしまう可能性もあります。

暴力は、周囲の人たちの体にも心にも傷を残す問題であり、認知症高齢者といえども決して看過できる問題ではありません。話しにくいデリケートな問題かもしれませんが、近所の人や仲の良い友人に現状を打ち明け、話を聞いてもらうだけでも、精神的に少し楽になれるでしょう。

どうしても暴力が絶えない、家族だけでは手に負えないといった場合は、役所や地域包括支援センターなどの機関に相談して早めに対策を取るようにしましょう。

■参考文献
『人を語らずして介護を語るな。masaの介護福祉情報裏板』菊地雅洋著 ヒューマン・ヘルスケア・システム発行
『クスリに殺される病院の認知症・高齢者治療 笑顔で死ねる家庭の認知症・高齢者治療』双葉社
介護のお仕事 9割超が「経験あり」、介護職が受ける暴言・暴力に関する実態結果を発表

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